コラム 【11月号】
● 今月のテーマ 〜 触文化 〜
 最近耳慣れない言葉が目に入りました。新聞からの情報ですが、「食文化」は良く聞きますが「触文化」とは?【触文化が人間の豊かな想像力をつくり、新たな世界を開く】というタイトルの広瀬浩二郎さん(国立民族博物館民俗文化研究部助手)が企画されている、博物館と視覚障害者との交流のお話の抜粋です。

 子ども達がPCの操作や文化的生活の中で、"手"全体を使う機会がめっきり減っていると実感する日々です。保護者の皆様はどう感じられますか?現在はインターネットを通じて、誰もが多種多様な視覚情報を入手できるようになりました。

  目が見えている方には、あえて目をつぶってふれてもらう。目と違い、手でさわると点でしか情報が入って来ませんが、手のひらを上下、左右に動かすと、想像力と創造力が発揮され、点だった情報が線になり、面になります。指先に神経を集中させて、繰り返しやさしくさわる。彫刻作品などの裏と表を同時にさわることで、意外な発見があるかもしれません。

 企画展で点字体験ワークショップをやりましたが、目が見えている人は普段あまり触覚を使っていないので、最初は点字をさわっても読めません。でも、特に子どもは少し練習すると、点の数が触知できるようになります。これまで使っていなかった触覚、眠っていた感覚を刺激することで何かがパッと「ひらく」瞬間があり、その時に新鮮な感動が生まれるのですね。大きくさわって「つくる」、小さくさわって「ひらく」というのが触文化の醍醐味で、この「つくる」と「ひらく」が今の教育に不足している実践知なのだと思います。(sada)
リトミック豆辞典
ジャック=ダルクローズの音楽指導…ダルクローズは1950年に死去するまで、音楽指導のアプローチの探求と精錬を続けた。鋭敏に聞き取るために心の耳を発達させる「聴音訓練」と「ソルフェージュ」。空間を使って表現しながらテンポや勢いの筋肉活動を感じるための身体訓練でもある「リズム運動」、聴いて感じて理解したことを自由な想像力によって意識的に表現させる機会を学生に与える「即興演奏」といったアイディアは、ジャック=ダルクローズの直弟子や彼のアプローチを学んだ学生らにとって、音楽の演奏力のあらゆるレベルを発達させる基礎であったと言えます。
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