コラム 【7月・8月合併号】
● 今月のテーマ 〜人のふりを見る、その深さ〜
 自分のやっていること、自分の力量。これほど分からないことはありません。能力だけでなく、姿、形、所作も自分には見えない。〜踊りのお稽古などもそれは顕著ですが、自分のお稽古そのものの時間より、待つ時間に意味がある。じっと人をつぶさ に観察し、あの人はこうすればいいのにと思う。それを自分の番になったら置き換えてやってみるとか、すなわち学びになるのですね。ところが現代は、自分の時間が来るまで他にいて、さっさと自分のお稽古だけ済ませて帰っていく。大切な学びがこぼれ落ちています。

 上手な人に交わらなければ、上手にはなれないとも言われる。これは仕事にも当てはまるでしょう。すぐそばでいい仕事をする人間を見ると、ハッと気づくものがあるのです。

 しかし、「安物買いの銭失い」という教訓通りの現状が、今の日本には散りばめられていると思います。「あ、欲しい。でも高いから、安くて似たようなものを買おう」となる。高みにあって手が届かないなら、手に入れられる力をつける。その大切さに至らないのは、結局愚かですね。自分をその本物に近づける事ができない。つまり、いつまでたっても階段を上がって行けないまま。妥協するクセがついた自分が残ってしまう。そういう、間に合わせで自分を形作ってはならないと思います。
        市川團十郎『市川團十郎が語る仕事 朝日新聞6/1夕刊“仕事力”』より

伝統を継承する重みと芸術を極める意欲と意思の深さに感銘を受けました。
ちなみに リトミック を日本に初めて導入したのは歌舞伎の市川左団次なんですよ。(sada)
リトミック豆辞典
 日本人ではじめてダルクローズのレッスンを受けたのは、歌舞伎の市川左団次で、1906年にロンドンの俳優学校でうけました。彼はダルクローズのシステムの土台になっている精神に共鳴し、歌舞伎界にとりいれ身体の表現や表情、俳優養成の基礎練習に役立てました。次に作曲家の山田耕作、劇作家の小山内薫、舞踏家の伊藤達郎、石井漠などがダルクローズのリトミックを学び、大きな影響を受けています。
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