コラム 【2月号】
● 今月のテーマ 〜 アール・ヌーボーの美 〜
 ピアニストで絵も描かれるフジ子ヘミングさんの本からの以下抜粋です。近頃歳のせいか、昔の物が妙に懐かしく、大切な思い出と共に、かけがえのないものとして蘇ってきています。

 昔、パリに遊びにきた時、一度見たかったアール・ヌーボー様式の建築を見物に行ったことがある。バシー地区には天才建築家ギマールがデザインしたアール・ヌーボーの建物が残っている。曲線を組み合わせた優美なデザインは美しく、いくら見ていても飽きなかった。 パリは今でも、いろんな所にアール・ヌーボーが残されているから嬉しい。

 フランス人のいい点は、美しいものを大事にすることね。多少古くて不便でも、美しくいいものは壊さず使っている。豊かな感性は、いい物を見たり、美しいものに囲まれている中から生まれてくる。美は値段じゃなく、道端の野の花にだってある。

 最近は悲しい事件が多いけれど、みんながもっと美しい優美なものに触れていれば、もう少し明るい世の中になるはずよ。直線的なデザインは、何か優美さとゆとりがなくて好きじゃない。みんな効率と便利さばかり求めているように思える。階段の手すりだって、経済的には直線のほうが安上がり。しかし、ほっとするような曲線の優しさはない。もっと誰でも、身の回りにアール・ヌーボーの優美さを取り入れるべきね。

『フジ子・ヘミンッグ著 我が心のパリ より』(sada)
リトミック豆辞典
  私たちは、しばしば感覚によって情報を得る能力を過小評価します。ダルクローズは「子どもに理解されていないことを聴かせ、読ませ、今までに習ったことのないことや、感じたこともない事を、書かせている」ことを残念に思っていました。彼は実際の体験が知識に先立たなければならないと感じていました。それゆえに、音楽教育において型にはまらない新しい考え方を着想し、発展させました。「私は、生徒の身体を使って音楽のリズムの感覚に反応するよう訓練します。」
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