近頃、なにやらぎすぎすとした余裕の無い世の中になってしまったな〜
“自分だけが良ければ良い”といった風潮も気になるな〜と思っていますが、先日やなせたかしさんについての記事を目にして、やはり“人間”としての優しさとは、心が広く、芯は強く、何より人の意見に耳を傾ける余裕を持つ事。これに尽きるのでは、と思いました。
94歳で亡くなったやなせさんは遅咲きの人だった。「アンパンマン」を生んだのは50代も半ばになってから。売れなかった時代は「一寸先は光」という言葉を心の杖にしたそうだ。一寸先が闇でなくて光なのは、人を励ます作風に通じる。
アンパンマンは相手を一方的にやっつけたりはしない。絶対の正義などないという持論は、先の戦争での出征体験による。声高な正義はうそ臭い。本当の強さとは優しさだと、物語は気づかせてくれる。漫画家ながら詩もつくり、詩集と名のつく本を何十冊も出した。季刊誌には、「ところであなたは?」という問いかけで終る巻頭の詩をいつも載せていた。
絵筆ひとつで童心と行き交い、老いていっそう輝きを放った。3・11の後は病気を押して子らを勇気づけた。「かっこ良くない正義のヒーロー」を生んだ人の生き方を見て思う。かっこ良いとは、こういうことを言うのだろうと。(朝日新聞 天声人語より)(sada) |