ピアニストで絵も描かれるフジ子ヘミングさんの本からの以下抜粋です。近頃歳のせいか、昔の物が妙に懐かしく、大切な思い出と共に、かけがえのないものとして蘇ってきています。
昔、パリに遊びにきた時、一度見たかったアール・ヌーボー様式の建築を見物に行ったことがある。バシー地区には天才建築家ギマールがデザインしたアール・ヌーボーの建物が残っている。曲線を組み合わせた優美なデザインは美しく、いくら見ていても飽きなかった。
パリは今でも、いろんな所にアール・ヌーボーが残されているから嬉しい。
フランス人のいい点は、美しいものを大事にすることね。多少古くて不便でも、美しくいいものは壊さず使っている。豊かな感性は、いい物を見たり、美しいものに囲まれている中から生まれてくる。美は値段じゃなく、道端の野の花にだってある。
最近は悲しい事件が多いけれど、みんながもっと美しい優美なものに触れていれば、もう少し明るい世の中になるはずよ。直線的なデザインは、何か優美さとゆとりがなくて好きじゃない。みんな効率と便利さばかり求めているように思える。階段の手すりだって、経済的には直線のほうが安上がり。しかし、ほっとするような曲線の優しさはない。もっと誰でも、身の回りにアール・ヌーボーの優美さを取り入れるべきね。
『フジ子・ヘミンッグ著 我が心のパリ より』(sada) |