コラム 【7・8月号】
● 今月のテーマ 〜ライブ演奏が持つ魅力〜
 音楽を「ライブ演奏」で聴く事の特別な意味を、ルネ・マルタン氏(注)はこう言っ ています。

 ライブというのは、最も美しく、最もいい経験だと思います。なぜなら、アーティストというのは不思議な存在で、これから演奏を始めようという時、自分の目の前にいる人たちを知ろうとするんですね。会場の聴衆を把握しようとする。いわば、演奏者が真っ先に考えることは、「自分は誰のために演奏するのか」ということなので、観客の「人間的な質」を、彼らは即、キャッチするのです。たとえば、小さな音を弾く時、ピアニストは、観客の集中力を量っています。会場が静けさや沈黙を生み出す事によって、聴衆が自ら音を探しに行くよう導くのです。ですから、「音楽を聴く」ということは、非常に能動的な行為だといえます。演奏家には「演奏する」というアクションがあり、観衆には「音楽を聴く」というアクションがある。これこそが、生のコンサートの豊かさであり、力であると私は考えています。コンサートの会場とは、アーティストの感情や心の動きばかりでなく、観衆の感情をも同時に観察できる場所なのです。

 (注)ルネ・マルタン 1951年フランスのナント近郊に生まれる。音楽と経営管理学を学び、1979年ナント市芸術研究制作センターを開設、音楽プロデューサーとして活躍。1995年より始めた音楽祭「ラ・フォル・ジュルネ」は、クラシック音楽シーンに一大ムーブメントを巻き起こしている。
リトミック豆辞典
 リトミック教育は「リズム」をテーマに進めていくため、多くの可能性、永遠性がもたらされます。フランスの哲学者、ディドロは、リズムを「声の抑揚の中に生み出された、まさに心のイメージであり、何百種類もの方法で区切られた、会話の進行過程の連続的な変化、加速、ほとばしり、抑制である」と述べていることからも、リズムの人間にもたらす教育上の意味の深さが、思われます。
← 前月号へ 次月号へ →